「Waves」
スマートイルミネーション横浜2019、アートプログラムのテーマは「スポーツ・からだ・エモーション」。東京大学大学院 情報学環・学際情報学府の准教授として教壇に立ちながらも、メディアアーティストとして活躍する筧康明先生。
スマートイルミネーション横浜では昨年、シャボン玉を光らせたプリミティブな作品「Pneuma」(東京大学/慶應義塾大学 筧康明研究室)を発表。今年の作品も水に関係する作品だと聞いたので、実験に訪れていた先生に作品について語っていただいた。
―展示作品における思いとは?
筧:海辺のパークで作品を展示するにあたり、“海を見るような気持ちで作品を眺めることがいかに可能か?”と考えました。“海を見る”は、果たして、光源を見ているのか、それともマテリアルとしての水の動きを見ているのだろうかという疑問があります。結局は、水面の動きに合わせた光の反射・拡散の移ろいを見ているんですね。そういう複合的な変化の関係の中に僕らは美しさを見出しているのではないかと。それならば、環境をメタにとらえてミニマルな光源とマテリアルの変化の中で、僕たちがじっと眺めていられるものを見出すことができるのか? それが、今回のチャレンジです。
―スマートイルミに参加する意義を教えてください
筧:僕たちは、このすぐ近くにラボがあるのですが、そこで作った作品を、外に持ち出し、いろんな人に見てもらって、持ち帰ってまた作る。ラボとフィールド、ショーケースが密接につながったようなモノづくりをしたいと思っています。そういう意味で、このイベントなど、近隣のイベントにも参加しています。また、ラボやホワイトキューブで完結してしまうだけではなくて、その外側にいかにメディアを持ち出せるかというチャレンジがあります。スマートイルミネーションの展示は、野外で雨もある、かなり過酷なコンディションと言えます。その中で何ができるか?という、もうひとつのチャレンジだと思いました。
―電力削減、省エネルギーについて、作品を通して考えられたこととは?
筧:無駄なものを減らそうというベクトルは重要ですが、もっとポジティブに考えてもいいかなと思います。エネルギーを減らすことだけを考えるのではなく、エネルギーの循環を作品作りの中で意識することが、新しい表現につながると思っているので。今のメディアアートにおいては電気があることが当たり前になりすぎています。その当たり前を疑うこと自体が新しい可能性につながるというスタンスでやっています。
―作品についてメッセージをお願いします
筧:作品が触媒のようになればいいなと思っています。今回の場合、ぼーっと、ある種、人工的な持ち込まれたモノを見ているのだけれど、いつのまにか海や空を見ていましたと。
周りの美しさに気が付くというか目が行くという、そういう触媒になったらいいなと思っています。ひいては、環境やエネルギーのことに意識がいくことにつながればいいなと思います。