5月から毎月1度のペースで開催されてきた、スマートイルミネーション トークサロン。秋のイベント開催に向けて、スマートイルミネーションに関わる、市民、企業、学生など、様々な立場の人々との対話や出会いの場を創出し、毎回、多くの参加者を得て、充実した集いを実現してきた。8月27日に開催された第3回トークサロンでは、大学連携をテーマに、大学の研究室や学生達にとって、より参加をしやすいスマートイルミネーションのあり方を巡り、意見交換がなされた。
様々な立場の人が、環境技術とアートを融合した新たな夜景づくりに関わるという基本コンセプトを持つスマートイルミネーションには、2011年の開始当初から、多くの大学の研究室や学生が参加をしている。多摩美術大学、筑波大学、東京藝術大学、早稲田大学、首都大学東京、横浜市立大学など、この日、一部の事例として紹介された大学名だけでもかなりのものだ。美術専攻の学生だけではなく、建築やアニメーションなど、学生が所属する学科にバラエティが見られることも特徴的である。2013年から実施してきた、スマートイルミネーション・アワードにも、大学の研究室や学生個人が数多く参加し、アワードを盛り上げる原動力となっていることが伺える。
今回のトークサロンは、より一層、大学連携の間口を広げるために何が必要かを、大学の先生方の声を聞く貴重な機会となった。
東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻の桐山考司教授からは、「過去の優れた作品を積極的に見せて行くことのより、学生が対抗意識を燃やし、さらに質の高い作品制作を目指すようしては」との意見が出された。アワードの大賞受賞作品など、質の高い作品のアーカイブを、学生が手に取りやすいところに掲出することは、すぐにでも実現できそうなアイディアである。
横浜市立大学国際綜合科学群の鈴木伸治准教授は、公共空間に作品を展開する際のハードルとなる、自治体や行政への交渉などについて言及し、「作品を公共空間に設置する際にアドバイスをしてくれる大人がいると良いのでは」と意見した。スマートイルミネーションを展開する川沿いや水辺は行政の管理部署が入り組んでいたりするため、一般的な公共空間よりもさらに許可関係のハードルがあがる。一方で、丁寧に調べて行政側と交渉する過程が、学生の学びに繋がるという視点もあるだろう。
また、横浜美術大学テキスタイルデザインコースの高瀬ゆり准教授からは、「学園祭時期にあたる11月の3連休は時期的に参加しづらい。前期に制作した作品をブラッシュアップして出品できる、9月頃に開催するとよいのでは」と、開催時期についてのアドバイスがされた。これについては、実行委員会のメンバーからも「次年度以降、検討したい」と、応答があった。
さらに、玉川大学芸術学部メディア・デザイン学科の田中敬一教授からは、「プロの企業と学生を直接結びつけるような枠組みを期待する。プロの技術力や制作現場は学生の制作を鼓舞してくれるはず。企業と学生の双方にメリットがある仕組みを考えられたら」との提案があった。第2回の企業とアーティストのマッチングを狙ったトークサロンに、大学の研究室や学生も強い関心を寄せているようである。作品制作をすると言う点において、アーティストと学生を区別することなく、アーティスト・学生という創り手と企業との連携の機会を、スマートイルミネーションが媒介する役割を今後担っていく可能性は大いにあるだろう。
スマートイルミネーションと大学のより深い連携を想定したとき、スマートイルミネーションが大学の授業の素材となり、学生達の学びの場となることが想定できるが、その為には、これまでの「学生のイベント参加」という構造からのステップアップが必要とされることも見えて来た。イベント開催前にはスマートイルミネーションの社会的意義や背景を振り返り、作品制作のビジョンを見定め、イベント後に実施事項を総括するなど、イベント準備から実施報告までの一連の流れを、大学教育とスマートイルミネーションが併走することができれば、授業として実現していけるかもしれない。スマートイルミネーション実行委員長の国吉直行は、「各大学の先生方のご意見は、実行委員会として運営を進める上で、非常に重要なお話をいただいたと思っています。学生も含めて産学を地域と連携して進めることを、今年からもう一歩、踏み込んでやっていきたいと思います」と締めくくった。
プレ開催を含めて4度開催してきたトークサロンは、今回で一旦、場を閉じることとなる。スマートイルミネーション横浜2015は、10月30日〜11月3日に開催される。トークサロンでの意見交換や出会いが、今後、具体的にイベントの運営に活かされていくことを期待したい。
実施概要
タイトル | トークサロン第3回「大学連携とスマートイルミネーション」 |
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開催日時 | 8月27日(木)19:00〜21:00 |
会場 | 象の鼻テラス |
パネリスト | 桐山 孝司 (東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻 教授) 鈴木 伸治 (横浜市立大学 国際総合科学群 教授) 高瀬 ゆり(横浜美術大学 テキスタイルデザインコース 准教授) 田中 敬一(玉川大学 芸術学部 メディア・デザイン学科 教授) 国吉 直行(スマートイルミネーション横浜実行委員会 委員長) 信時 正人(スマートイルミネーション横浜実行委員会 委員) 岡田 勉(スマートイルミネーション横浜実行委員会 アートディレクター) |
進行 | 守屋慎一郎(スマートイルミネーション横浜 プランナー) |
(文・写真:友川綾子)