先月開催されたトークサロン「プロローグ」を経て、いよいよスマートイルミネーション横浜2015のトークサロンが本格始動した。秋の開催に向け、イベント運営の方針を、市民、地元企業、アーティスト、主催者と様々な立場を超えてつくりあげる場となるこのトークサロン。月曜夜の開催にも関わらず、50名を超える人が象の鼻テラスに駆けつけ、登壇者の話に熱心に耳を傾ける様子は、スマートイルミネーションに対する関心の高さを伺わせた。今回のテーマは「まちづくりとスマートイルミネーション」。みなとみらい21、馬車道、日本大通りでまちづくりに携わる方々をパネリストに迎え、まちづくりの視点でスマートイルミネーションをどう活用できるかが話し合われた。
まちづくりと「光」という視点では、横浜のまちなかでは、5年前にスタートしたスマートイルミネーションに先駆け、様々な取り組みがなされている。
みなとみらい21地区では、18年前からクリスマス・イブの夜をまち全体が彩る、地区内のオフィスフロアを全館点灯するイベントが行われている。また、エコ意識の高まりから、ちょうどこのトークが開催された夏至から七夕までの数日間を全館消灯の期間と設定している。八幡準さん(一般社団法人横浜みなとみらい21事務局次長・企画調整部長)は、「情報発信の面に加え、エリアマネジメントの視点からいえば、現在、積極的に参加してくれる企業だけでなく、就業者や居住者も一緒になってやっていきたい」と、取り組みの課題を語った。
馬車道通りの名物でもある「ガス灯」は、もともとはガス灯の形をした水銀灯だったそうだが、まちづくり事業の一環として2003年に本物のガス灯に改造された。この改造をきっかけに、毎年10月31日(ガスの火)にガス灯点火式を行い、同日から馬車道まつりを開催している。これもまた、商店街が主催する「光」のお祭りと言えるだろう。現在は山下公園通り、万国橋通り、馬車道に点在しているガス灯。山口和昭さん(馬車道商店街協同組合副理事長)は、これをつなげて「水辺とレトロな横浜をつなぐ、ガス灯プロムナードを形成したい。“横浜”だけではなく、“縦浜”も広がって行くと面白いのではないか」と、ガス灯をめぐる取り組みに意欲を見せた。
2005年に立ち上げられた日本大通り活性化委員会では、設立当初から、沿道に手作りでイルミネーションを設置し、訪れる人の目を楽しませるイベントを開催している。市の協力を仰いでいるとはいえ、委員会の出資だけでは、せっかくのイルミネーションの持続や集客面が課題でもある。日比生猛さん(日本大通り活性化委員会会長)は、「リヨンの光の祭典は400万人が訪れます。ひとつひとつのイベントでバラバラにやっていると、集客力も落ちる。面や全体で人を呼べるような場所の一画として、日本大通りがあればいいかなと思っています。市も県も一緒に話し合って、ひとつの大きなイベントにしていけるといいのでは」と、既に行われている「光」のイベントを担う人の協働を示唆した。
今回は異色の登壇者ともいえる、公共空間の活用プロジェクトを多岐に手がけている山名清隆さん(ミズベリングプロジェクト・プロデューサー)は、高速道路を牧場にしたり、広場や橋に人々が集い、唐突にお洒落なパーティーを始めたりするなどの、公共空間を活用する“妄想”や実例を数多く紹介した。「公共空間に対するある種の妄想や市民の大胆なアイディアから、生活パターンが変わり、インフラの意義が変わり、空間の価値が変ってくる。粋な人が住むまちが、いいまちという価値観。楽しむ人を増やしてまちを変える人が増えれば、新しいビジネスを作れる。そのためには行政も新しい手法を考えなくてはいけないし、市民も主体性と自己責任を持たなくてはいけない」と熱く語る。オリンピックや少子高齢化、車が減少する社会でのインフラの意義など、押し寄せる社会変革に対し、公共空間を活用する市民の大胆不敵なアイディアや“妄想”を促すことにより、クリエイティブパワーが加味された、ワクワクする近未来を作っていこうというのだ。さらに、「スマートイルミネーションはその動きの先端を走っている。全国のモデルケースになれるような形にしていけばいいのでは」と、スマートイルミネーションの今後に期待を滲ませた。
横浜のまちづくりと「光」には、実は長い歴史がある。ヨコハマ夜景演出事業推進協議会(2015年春に解散)は1986年より、イルミネーションイベント「ライトアップ横浜」を行い、歴史的建造物のライトアップ事業などを手がけてきた。こうしたことから、まちの中の「光」のあり方を、ある種のプラットフォームとして考え、まちづくりや公共空間の活用を、行政や市民が共に“妄想”していく準備は、十分に整っているといえるだろう。横浜で夜景を撮り続けている森日出夫さん(写真家)は、「提案したいことが沢山あったのですが、山名さんの“妄想”という点が、いろいろな意味で勉強になりました」と話す。アートディレクター岡田勉は「横浜にしかできないことをどう実現していくかが大切だと思います。山名さんのアイディアも、横浜に応用して展開をすることができれば非常に面白いなと思う」と、横浜の地にアイディアを根付かせる方策を、丁寧に考えて行く姿勢を見せた。
各面で、「世界で勝てる都市」への変革が横浜に期待されていることが浮かび上がってきた今回のトークサロン。一方で、こうした動きには企業が連動していくことも重要であり、参加者からは「企業側にどんなメリットがあるのかという、共有しやすいストーリーが必要」との指摘もされた。そうしたストーリーは、市民、地元企業、主催者、アーティストなど、様々な立場の人の声を聞くことにより形作られていくものだろう。実行委員長の国吉直行は、「横浜は常にチャレンジしていく都市。今後もいろいろな角度から挑戦していくためには、様々な立場の人が重なっていく場をつくることが大事。これから数回トークサロンを実施していく中で、他の活動をされている方にもぜひお話いただきたいと思います」と、締めくくった。
この後、トークサロンは7月21日(火)に開催が予定されている。次回は最先端の環境技術を持つ企業とアーティストとのマッチングを目指す回となる予定だ。新しい環境技術のプレゼンテーションの場を求める企業担当者と、「光」をアートに昇華させるアーティストの参加を期待する。
実施概要
タイトル | トークサロン第1回「まちづくりとスマートイルミネーション」 |
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概要 | タウンマネジメントの実験場のひとつとして、スマートイルミネーションをどう活用できるか。様々なプレーヤーとともにその可能性を探ります。 |
開催日時 | 6月22日(月) トーク:18:30~20:00 スナック・スマートイルミネーション(交流会):20:00~21:00 |
会場 | 象の鼻テラス |
パネリスト | 森日出夫(写真家) 山口和昭(馬車道商店街協同組合 副理事長) 日比生猛(日本大通り活性化委員会 会長) 八幡準(一般社団法人 横浜みなとみらい21 事務局次長・企画調整部長) 山名清隆(ミズベリング・プロジェクト プロデューサー) 岡田勉(スマートイルミネーション横浜 アートディレクター) |
モデレーター | 国吉直行(スマートイルミネーション横浜実行委員会 委員長) |
進行 | 森 由香(スマートイルミネーション横浜実行委員会 事務局長) |
主催 | スマートイルミネーション横浜実行委員会 |
(文・写真:友川綾子)